文化政策ミニレクチャー
「地域は変わったか〜住民が担う小出郷文化会館物語〜」
ゲスト:榎本広樹さん(新潟県魚沼市小出郷文化会館)
2006年9月9日(土)13:30〜15:00 福岡市人権啓発センター研修室
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小出郷文化会館は、行政が作成した会館のプランに住民がノーをつきつけ、住民有志が集まってつくった会館のコンセプトにもとづいて建設された公立文化施設。施設建設だけでなく、館長に役所の天下り職員が決まりそうになったとき、行政が十分な事業予算をつけられなかったとき、人手が足りないとき、そのつど起こった住民の自発的な行動に支えられてきた数々のエピソードを伺うことができました。
この住民の成熟度は一体どこからくるのでしょう?
同じことが福岡で起こったとして、住民がこんな動きを起こすことは、残念ながら考えにくいと思います。民度の差、とは言いたくないのですが、小出郷でこんな動きを可能にした土壌はなんなのだろうかと考えました。榎本さんは「小出郷(魚沼)は小さな地域であること、寒い地域はお互いに助け合わないと生活していけないこと」を指摘されていましたが、私はそれに加えて、昔から連綿と続く地域での教育を重視する風土ではないかと思っています。昨年2月、実際に小出郷を訪れた際、この地には江戸時代の寺子屋のようなものから続く社会教育の歴史があると聞きました。また、行政が休止しようとした歴史ある文化事業を「オレたちがやる」と市民が立ち上がったある都市でも同じ様な話を聞いたことがあります。現在の地区公民館単位で行われてきた塾のようなものの歴史があり、地域のことは地域で決めるのが当然、という空気を持っている、と。社会教育に関しては、福岡市だってほかの都市だってそれなりの蓄積があるはず。ただ、これらの地域には行政が法律にもとづいて行ってきた施策ではない、地域教育とでもいうべきものの重みを感じるのです。
さて、地域教育を通じて培われて来た風土が行政をリードする住民を生むことには頷けるとして、そんな風土がこれまでなかった地域はどうすればいいのか。答えは簡単ではありませんが、なければつくるしかないのでしょう。その場面で文化施設の果たす役割は大きいものがあるのではないでしょうか。まちづくりを担う人材育成の機関としての公立文化施設の使命が、行政内部や地域の人々の間でしっかり認識されるようにしなければ、と強く思った1日でした。
ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。(古賀 弥生)
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