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文化政策レクチャー

アートサポートふくおか・文化政策レクチャー番外編/公開勉強会
公立文化施設民営化の課題と展望〜指定管理者制度の導入を契機として〜

日時:2004年5月30日(日)13:30〜17:00 会場:あじびホール

今回の勉強会は、昨年9月に改正・施行された地方自治法の指定管理者制度導入について勉強し、今後の課題と展望を検討していこうというもの。各パネリストの報告とパネリストによるシンポジウムという2部構成で行ないました。

パネリストは、UFJ総合研究所 芸術・文化政策センター長の太下義之さん/NPO法人エム・ワイ・ピー理事長の加藤治さん/(有)ステージクルー・ネットワーク代表取締役の糸山義則さん/(財)福岡市文化芸術振興財団専務理事の吉村哲夫さんの4人です。

まず、最初に太下さんから、指定管理者制度について概要をご説明いただきました。そして、(1)この法律の改正に至った背景、(2)導入されると具体的にどういう点が変わってくるのか、(3)どんなことが留意点となるのか、をそれぞれポイントを絞ってわかりやすく説明していただきました。特に3番目の留意点を4つにまとめてお話しいただいたのですが([1]管理運営能力の問題[2]情報公開の問題[3]サービス品質の評価・監査の問題[4]NPOと民間の競合(協働)の問題)整理してお話しいただいたおかげで、論点が明確になり、その後の議論が進めやすくなりました。

そのあとアートサポートふくおか代表の古賀から、現在進めている九州地区公立文化施設を対象とした運営形態に関する調査の中間報告を行ないました。

次に各パネリストによる、それぞれの立場からこの指定管理者制度についてどのようにお感じになるのか、ご報告を頂きました。実は、パネリストのお三方はお立場が全く異なります。加藤さんは、宗像ユリックスでプラネタリウムを運営するお仕事を、以前は民間企業の社員という形態で、そして現在はNPOメンバーという立場でなさっています。「最も採算がとりにくい」プラネタリウムを運営していくにあたり加藤さんの立場が移行した経緯からお話しいただきました。糸山さんは、民間企業というお立場(劇場・ホールの技術を引き受けるお仕事)からお話しいただきました。吉村さんは(財)福岡市文化芸術振興財団、つまり行政として芸術環境の整備をサポートされているお立場です。実際に全国あちらこちらに調査に行かれて膨大な知識と資料をご提供下さいました。こういった立場の違う方々が、それぞれ指定管理者制度についてどのようにお感じになっているのかを話した上で、後半のシンポジウムへと突入。

シンポジウムでは、太下さんの「文化施設はそもそも何のために存在しているのかそのミッションを確認していくことが重要」という指摘で幕を開けました。前半に糸山さんがおっしゃった「指定管理者共同体」――つまりそれぞれの得意分野を活かす形の共同体が出来はしないか――というご提案も重要な議題の一つとなり、大きく、「ミッション(使命)」「共同体(連帯)」「評価」という3つのテーマでこの制度について話し合われました。会場の参加者からの質疑応答も含め、時間いっぱい、しっかりと議論が出来、有意義なシンポでした。

もちろん、この制度に対する対処・対応の「正解」はありません。まずは正しい知識を持ち、課題を検討し、それぞれが「宿題」とすること、それが今回の勉強会の目的だったのですが、パネリストのお話からシンポまで通して、参加者の皆さんがそれぞれ何かを持ち帰ってくださったのではないかと思います。私どもも、皆さん方から色々と勉強させていただいて実りのある一日となりました。ありがとうございました。(柴山麻妃)

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