体験セミナー:音楽と教育のしあわせな関係を探ろうレポートはこちら 2005年1月10日(月祝)13:30〜16:30
前半は林先生によるレクチャーが行われ、アメリカ・日本における音楽家のアウトリーチ活動による学校での授業について興味深いお話を聞くことができました。林先生によれば、音楽家によるアウトリーチ活動とは、「普段音楽に親しみにくい人々に対等な交流を通して音楽を提供すること」であるそうです。アメリカでは財政難のため、学校教育から芸術の時間が大幅にカットされるという事態が生じました。このような状況に危機感を抱いた音楽家たちは自ら立ち上がり、子どもたちに音楽体験を提供するためのアウトリーチ活動をスタートさせたそうです。学校教育における芸術の排除という「不幸な」状況から生まれた取り組みは、やがて芸術機関や芸術系の学科をもつ大学、芸術教育普及活動を行うNPOなどと学校との連携によって社会にしっかりと根付いていきました。このように音楽家によるアウトリーチ活動の先進国ともいえるアメリカで実際に行われた授業の様子をビデオ鑑賞しましたが、訓練を受けた音楽家によって子どもたちが音楽の世界に引き込まれていく様子は見事なものでした。また、音楽家自身が子どもたちとのコミュニケーションを楽しんでいる姿が印象的でした。 教師と音楽家が協働して授業づくりをする際のコツを林先生から伝授していただいた後は、ベテラン松原先生による模擬授業が行われました。フルート奏者の田中瑞穂さんをゲストティーチャーにお迎えし参加者は童心に返って(?)児童役に挑戦しました。児童からゲストティーチャーへの質問コーナーでは「先生の楽器はいくらするんですか?」「楽器にはいくつ穴が開いてるんですか?」といったユニークな質問がたくさん飛び出し、松原先生は少し困った様子の田中さんと生徒たちとの間を絶妙な合いの手で橋渡しする、という形で授業が進みました。 教師と音楽家の協働による授業づくりにおいてもっとも難しいのは、授業における両者の理想をより合わせることのようです。このため、教師と音楽家をつなぐ「コーディネーター」という役割の重要性を林先生も松原先生も強調しておられました。しかし思いはひとつ、「子どもたちに素敵な音楽体験を!」、です。音楽のプロである音楽家、子どもとのコミュニケーションのプロである教師、そして両者をつなぐコーディネーター―それぞれがプロとしてそれぞれの役割を果たした時はじめて、子どもたちにとってかけがえのない時間が生まれるのではないでしょうか。(湯浅翔子) |